9月号編集後記 「あさのあつこさん」

岡山県・美作にあさのあつこさんの取材で伺った。

6月時点で岡山知事からは、他府県からの来宅は遠慮いただきたいの通達。でも、会いたい。
あさのさんが日々暮らしている、見ている景色を見たい・・・の思いを伝えた。
 
思っていた通りの景色だった、ウソ。
それ以上だ。
車で走っていると、森と川がどこまでも月のようについてくる。
あさのさんの作品のバックヤードにある豊かさと強さを思う。
 
あさのさんのヒット作『No.6』から引用する。
 
さわり。
風を感じる。
花の匂いがした。ほんのりと甘い野辺の香り。
さわり。
頬に風が触れ、前髪がなぶられる。
ああ、まだまだ。また……あれだ。
目を開ける。
光が沁みた。
草原が広がっている。
・・・
 
絶望を何度も経験しながら、怒りを生きるエネルギーに替え、
術として死の淵に立ち、そして眠りたいと思った「ネズミ」が一瞬みた景色。
美しく、残酷で、いつの世にもありうる事実、と思うこのごろです。
 
浅野